廃屋の捨てられ姫は、敵国のワケあり公爵家で予想外に愛されています
「この度は王女様の生誕祭と称号授与。度重なる祝い事、誠におめでとうございます」

「ありがとう。それよりも、エスカーダ公、なぜ武装を?礼装ではないのか?」

「……失礼ながら、私の礼装はこの鎧にて。公の場に似つかわしくないのは承知の上ですがご容赦を」

くぐもった声で淡々と述べるダリオン。
しかし、私はそれが建前であると知っている。
人嫌いで有名なダリオン・エスカーダ。
彼は公衆の面前だとか、政治的な催し物を嫌っている。
だから、極力人を見ないように、また、見られないように、鎧を着込んでいる……のだけど。
逆に目立ってしまっていることに、おそらく本人は気づいていない。

「まぁいい。ルキア、どうだ?驚いたか?」

「え?あっ、もしかしてお父様!ダリオン様が来ることを知っていて黙っていたのですか!」

「すまんな。でもこの贈り物が一番嬉しいのではないか?贈り物は驚きが大切だ!」

お父様はいたずらを成功させた子供のように、満足げに微笑んだ。
さすが、アルカディア劇団座長、脱帽です。
あれが演技だったなんて、全然わからなかったわ。
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