廃屋の捨てられ姫は、敵国のワケあり公爵家で予想外に愛されています
それにしても……。
煩わしさが嫌で、士官学校へ行ったというのに、なんで結婚などして、面倒なものをしょい込まなくてはならないんだと心底思う。
私は醜い人間関係に興味はない。
政治や派閥など反吐が出るくらい嫌いだ。
軍部にいて戦だけしていれば、煩わしいことからは距離をおけるし、そのほうが楽なのだ。
しかしこうやって、ランスロットやユグリス殿下が、ことあるごとに縁談を勧めたりしてくる。
……もういっそ、男色だと公表してしまおうか。

「あ、そうそう。これ、昨日の夕方届いたのですが……」

ランスロットは喚き散らしていたのが嘘のように、サッと懐から手紙を取り出した。
この豹変具合が、たまに何かの病気じゃないかと思えてくるのだが……そうじゃないことを切に願う。

「手紙?一体誰から?」

私は手紙を受け取りつつ、差出人を確かめて驚愕した。
一通は「トマス・イエーレン」。
彼は王家の御抱え医師だ。
お婆様の目の診察をしているので、私に手紙を寄越すのはわかるが、問題はもう一通だ。
差出人は「カトレア・エスカーダ」だったのだ。

「お婆様からだと……!」

思わず口にすると、ランスロットが目を丸くした。

「え?カトレア様?でも、目がお悪いのですよね?手紙なんて無理では?」

「代筆だ。筆跡からするとセルジュだろうな。だが、差出人にカトレア・エスカーダと書かれている。つまりこれはお婆様の意向というわけだ」

しかし、別宅に引きこもっているお婆様が、何故今、手紙など寄越したのか。
……まさか、あの娘!フェルナンシアの王女が何かしでかしたのではないか!?
私は慌てて手紙を開き、中を確認した。
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