廃屋の捨てられ姫は、敵国のワケあり公爵家で予想外に愛されています
「それで、来るのは勿論、カトレア様だけじゃないですよねぇ?」

「ん?……ああ、使用人も、と書いてある」

「やったぁ!それじゃあ僕、閣下にお茶を淹れたり、肩を揉んだり、食事を持って来たり、その他諸々の苦役から解放されるんですねっ!」

「苦役?お前、そんな風に思っていたのか?」

ジロリと一睨みすると、ランスロットも負けじと薄目で睨んできた。

「むしろ気付かない方がおかしいですよ?閣下は、もっと人と接するべきです。そうすれば、僕の気持ちがわかりますから!」

「わかる必要はない」

ランスロットは、やれ人でなしやら、鬼、悪魔!と一気に捲し立てた。
それを聞き流しながら、私はまた手紙に目を落とす。

お婆様からの手紙には、あの王女のことが何も書かれていなかった。
特に気にはならないが、ユグリス殿下から後見を任された以上、多少の責任はある。
知らぬ存ぜぬでは済まないだろう。
……まぁいい。
お婆様がこちらに来たら、それとなく状況を聞いてみよう。

そう考えを纏めると、私は叫び疲れたランスロットに言った。

「さて、そろそろ軍部詰所へ向かおうか」
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