廃屋の捨てられ姫は、敵国のワケあり公爵家で予想外に愛されています
馬車はエスカーダ邸を背に、ゆっくりと進み始めた。
緩やかな坂道を下ると、今度は活気溢れる町並みに入る。
エスカーダ家の馬車を見て、老人たちは恭しく頭を下げ、子供たちは手を振る。
その光景を見て、エスカーダ家がどれだけすぐれた領主なのかが窺えた。
「おばあ様、みなさんがこちらを見ています。とても好意的ですね!」
「ふふ。私とディミトリはお忍びで町によく行ったものよ。この辺りの人なら顔見知りも同然ね」
「え!?そうなのですか?」
……意外である。
高貴さが滲み出るおばあ様が、町に繰り出す姿が全く想像出来なかったからだ。
しかし、おばあ様は少女のような表情をしていた。
懐かしそうに、愛おしそうに。見えない目で町並みを眺めている。
「どこもかしこも、思い出ばかり。見えなくてもわかるわ。ああ……私、本当にバカだったのね」
「おばあ様?」
「こんなにも、いろんな場所にディミトリはいたのに……それを見ようとしなかったなんて。私ね、目を治して彼と見た景色をもう一度見たいわ」
「は、はい!そうですね!きっときっと、目は治りますよっ!」
威勢良く言うと、おばあ様は高らかに笑った。
エレナやローリー、ミレイユも釣られて笑っている。
馬車の中は笑い声でいっぱいになり、その雰囲気のまま、一路王都へと向かったのである。
緩やかな坂道を下ると、今度は活気溢れる町並みに入る。
エスカーダ家の馬車を見て、老人たちは恭しく頭を下げ、子供たちは手を振る。
その光景を見て、エスカーダ家がどれだけすぐれた領主なのかが窺えた。
「おばあ様、みなさんがこちらを見ています。とても好意的ですね!」
「ふふ。私とディミトリはお忍びで町によく行ったものよ。この辺りの人なら顔見知りも同然ね」
「え!?そうなのですか?」
……意外である。
高貴さが滲み出るおばあ様が、町に繰り出す姿が全く想像出来なかったからだ。
しかし、おばあ様は少女のような表情をしていた。
懐かしそうに、愛おしそうに。見えない目で町並みを眺めている。
「どこもかしこも、思い出ばかり。見えなくてもわかるわ。ああ……私、本当にバカだったのね」
「おばあ様?」
「こんなにも、いろんな場所にディミトリはいたのに……それを見ようとしなかったなんて。私ね、目を治して彼と見た景色をもう一度見たいわ」
「は、はい!そうですね!きっときっと、目は治りますよっ!」
威勢良く言うと、おばあ様は高らかに笑った。
エレナやローリー、ミレイユも釣られて笑っている。
馬車の中は笑い声でいっぱいになり、その雰囲気のまま、一路王都へと向かったのである。