廃屋の捨てられ姫は、敵国のワケあり公爵家で予想外に愛されています
「ルキア様は頭がいいのですねぇ。何でもすぐに覚えてしまって」

「え?そんなことないわよ。ローリーだってたくさんのレシピを覚えているじゃない?」

羨望の眼差しを向けるローリーに私は言った。
千を越える食材や調味料を何億通りも組み合わせ、絶品料理を作るほうがよっぽど凄いことだと思う。

「それとは違う気がしますけど?」

「同じだと思うよ?私は美味しいものがいっぱい作れるローリーを尊敬するし、ドレスを作ってくれるミレイユも凄いと思うし、2人を纏めてるエレナの統率力に憧れるわ」

「ま、まぁそんな……」

と、エレナは顔を赤らめ、

「ひゃぁ、誉め殺しですかぁー!」

と、ミレイユは叫び、

「そ、尊敬……勿体ない、勿体ない」

と、ローリーは繰り返す。

三者三様の様子に、私は堪らず吹き出し、おばあ様も甲高く笑う。
身分や世代は違うけど、女子会のようでとても楽しい。
足の引っ張り合いの多かった前世や、フェルナンシアの日々に比べればエスカーダ家は天国みたいだ。
幸せを感じていると、馬車が静かに止まった。
目的地についたのかな?そう思い、窓の外を見ると、立派な造りの真っ白い建物が見えた。

「着いたようね」

おばあ様の言葉と同時に、馬車のドアが開く。
その向こうには、小動物のように大きな目の可愛らしい男性がにこやかに笑っていた。
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