廃屋の捨てられ姫は、敵国のワケあり公爵家で予想外に愛されています
「長旅お疲れ様でした。カトレア様、皆さん。僕はランスロット・グレジッド、王宮に出掛けている閣下の代わりにお出迎えに参りました」

「ランスロット……ああ、グレジッドの三男ね。ご苦労」

「お手をどうぞ。中へご案内致します」

ランスロットはおばあ様に手を差し出した。
しかし、おばあ様はそれを断った。

「結構。手はルキアに引いてもらうわ。案内だけして頂戴」

「え?ルキア……?」

ランスロットはキョロキョロと辺りを見回した。
そして、メイドたちに目を向けて、納得したように頷いた。

「さぁ、ルキア。馬車から降りましょう」

「はい、おばあ様」

私はランスロットとおばあ様の間に割り込んだ。
すると、ええっ!?という驚愕の叫びが頭上から……。

「ル、ルキアって、この子ですか!?」

恐らくメイドの誰かだと思っていただろうランスロットは、目を見開いた。
それもそうだろうな。
おばあ様の影にいたから私の姿は見えてない。
いきなり子供が湧いたのだから、その驚く気持ちもわかる。

「そうですよ?聞いていないの?ダリオンがフェルナンシアから連れてきた子ですよ」

「……あ!あー!はい、聞いてないけど、知ってます!ユグリス殿下に頼まれて後見を務めることになったって……」

聞いてないけど、知ってます?
奇妙な言葉に引っ掛かりながらも、私は教えてもらったレグナント式淑女の挨拶を返した。
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