廃屋の捨てられ姫は、敵国のワケあり公爵家で予想外に愛されています
「そのような態度はおよしなさい。ルキアが怯えているじゃないの。私たちの家族になる子なのですよ?」

おばあ様はピシャリと言った。
もしかして、私の挙動のおかしさを感じ取ったのかしら。
怯えているように感じたのなら、それは、狂喜乱舞を堪えていただけなんです! ごめんなさい。
でも、ダリオンは何も動ずることなく無表情で返答した。

「家族?ただの後見でしょう?」

「違いますよ、ダリオン。このルキアはあなたの婚約者になるのですよ」

「……婚約者」

「婚約者!?」

「はへっ?」

最初はダリオン、次にランス。
そして、時間差で私のすっとぼけた声が響いた。
いや、あの……どういうことでしょうか?
養女じゃないの?婚約者って……え?

「正気ですか?まだ子供ですよ?」

あたふたするランスと私を一瞥し、ダリオンは冷ややかに言った。

「正気よ?あなたがいつまでも一人でいるから、私が決めて差し上げました」

おばあ様も負けてない。
その様子はさながら、龍と虎の睨み合いのようである。

「お断りしても?」

「許しません」

応接室の中は絶対零度である。
おばあ様とダリオン以外は、ピキーンと凍ったように動かない。
勿論私も……。
婚約者だと言われてひたすら困惑していたけど、そんなのどうでもいい雰囲気になった。
怖い。ただ、怖い。
今にも剣を抜いて、斬り合いを始めるんじゃないか……そんな気配に誰も口を挟めないでいる。
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