あなたを愛しています
むしゃくしゃが収まらないまま、私は朝食を摂り始める。自分で作ったのに、なんでこんなに不味いんだろ。そうだ、あいつのせいだ・・・私の中で、憤懣が膨れ上がる。


一応、点けているテレビから流れる情報番組のイケメンMCの声も、今はほとんど耳に入らずに、私はむくれながら、箸を口に運ぶ。


「ごちそうさまでした。」


誰もいなくても、食事が終わった時に、こう言って、手を合わせるのは私の決め事。さぁ、と立ち上がろうとして、ふと夫が残して行った食器が目に入ると、途端に気分が悪くなる。気を取り直して、洗面所に行けば、一角を占める洗濯機からは、夫が放り込んだ洗濯物が『こんにちは』している。


こうなると主婦はキツい。朝っぱらから奥さんと揉めて、向こうもさぞ気分悪いだろうけど、出社して仕事が始まれば、とりあえず忘れられるはず。


だけどこっちは、夫の痕跡に囲まれ、後始末に追われてさ・・・凄く気分悪い!


なんで、あんな奴の為に家事しなきゃなんないのよ。全部放り出して、気晴らしにどっか行ってこよう、なんて思っても、サボったツケは最後は自分に回って来ちゃう。


結局、私は膨れ面で夫の残した食器を片付けて、夫の下着を洗って干して・・・。


そうこうしているうちに、不思議なもので、だんだん頭に上りっ放しだった血も下がって来て・・・。


(あれ?私、なんであいつとあんなケンカしたんだっけ?)


なんて考えてしまう。


よくよく考えてみると、原因は「犬も食わない」ようなもので、付き合ってる頃なら素直に言えた


「ごめん。」


の言葉も、夫婦を何年もやってると、なんだかよくわからないプライドが邪魔して、お互いに出て来ず、あとは売り言葉に買い言葉の応酬になっちゃって・・・。


「あ〜ぁ、あんなこと言わなきゃよかった・・・。」


一段落して、リビングに戻って、ひと息つこうと腰を下ろしたときには後悔と反省が押し寄せて来ていた。
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