堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
「とにかく、今日はジルが来るっていうし」

「こいつに無理やり呼び出されただけだ」
 これは事実だ。無理やりかどうかは、本人のみぞ知る。

「無理やりって酷くないか? 正攻法でいったら断るくせに」
 二人の会話に国王までが混ざったため、ややこしくなってきた。

「この娘はジルと会ったことがないし。ってことで急いで来ちゃった」

 来ちゃったじゃないよ、とジルベルトは心の中で思う。また面倒くさいのが増えた、というのが本音。

「ちょっと、ジル。今、面倒くさいって思ったでしょ」
 彼女がぐいぐいとジルベルトに迫っている。もちろん、ジルベルトは困っている。その様子を見ていたエレオノーラは勇気を振り絞って、声を出してみた。
 いや、王妃殿下とジルベルトのやり取りが面白く、普段のジルベルトではないジルベルトを目にすることは嬉しいのだが、何よりもジルベルトが困っているように見えたから。

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