堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
「第二王女殿下ですね」
 エレオノーラは上品に笑んだ。

「抱いてみる?」
 王妃のその言葉に。

「そんな、恐れ多いです」
 胸の前で両手を振るエレオノーラ。

「いいのよ。この子、人見知りしないから」

 王妃はエレオノーラの振っていたその両手にそっと赤ん坊を渡す。

「こことここを支えてね」

 柔らかいのに、重い。あぶあぶと、赤ん坊は小さな右手をぐーにしてエレオノーラの方に突き出した。

「まあ、あなたのことが気に入ったみたい。私、いいこと考えちゃったんだけど」
 王妃の笑みが恐ろしい。

「やめてくれ、君のいいことなんていいことになった試しがない」
 ジルベルトは右手で額を押さえた。

「ねえ、エレオノーラをこの娘付きの侍女にどう?」
 ほらみたことか、とジルベルトが呟いた。

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