堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
「あの、ジル様。今日の私は、ジル様の婚約者らしく知的美人な装いです。特に可愛らしいはコンセプトにしていないのですが?」

 そう、今日のエレオノーラは知的美人。ぱっと見たら可愛い、というよりは美しいという形容詞の方が似合う女性、のつもり。

「ああ、見た目はそうかもしれないが。エレンの仕草の一つ一つが、その、可愛らしいということだ」

 言葉に詰まりながらもなんとか説明しようとしてくれるジルベルト。だが、そんなことを面と向かって言われては、エレオノーラだってどうしたらいいかわからない。しかも、ジルベルトの前ではうまく彼の婚約者という仮面をつけることもできないから、恥ずかしさと嬉しさがすぐに顔面に表れてしまう。

「エレン」

 ジルベルトが真顔になり、エレオノーラの右手をとった。彼の顔の赤みは少し引いたようにも見える。

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