堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
「あなたに口づけをしてもいいだろうか」
 エレオノーラがそれに答える間もなく、右手の甲に口づけを落とされた。

「今はまだ、これで我慢をしておこう」
 ジルベルトは満足な様子。

「あの、ジル様」

「どうかしたのか?」

「それ以上の責任はとっていただかなくても、大丈夫です」
 恥ずかしさのあまり、エレオノーラはそれだけを言うことで精いっぱいだった。

「いや。きちんと責任はとらせて欲しい。だから、安心してくれ」

 何に安心しろ、と言っているのだろうか。それにこれ以上の責任って一体何なのか。
 エレオノーラの心臓は、早鐘のようにカンカンカンと激しく打ち付けていた。
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