堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
 ジルベルトは机の上に肘をつき、その上に頬を乗せた。ため息しか出てこない。それでも、サニエラを責任者にした場合の配置について考え始めてしまう自分がいる。むしろそれを考えていた方が気持ちは楽だった。

 だがすぐに、ジルベルトは両手で頭を抱え込む。警備配置は何とかなる。何とかならないのはこの招待状。なぜこんな場所にこの招待状があるのか。おかしいだろう。

 建国記念パーティであり、こうやって国王陛下直々から招待状がきてしまった以上、エレオノーラを連れて参加しなければならないのはわかっている。だけど、なんとも表現し難い気持ちが沸き起こる。
 あのような社交界で、彼女を他の人むしろ他の男性に会わせたくないという思いがふつふつと湧いてくるのはなぜだろう。彼女のことだから、社交界用の女性を演じてくれるだろう。自分に似合うように、と。だが、それでも嫌だった。
 この気持ちをどのように表現したらよいのか。

 顔をあげ、憎らしい招待状に視線をうつす。リガウン家に送らず、この第一騎士団宛てに送ってくるところがさらに憎らしい。サニエラにバレてしまった以上、どうにもこうにも逃げられない。
 そしてふと考える。もし、この招待状がリガウン家に届いていたとしたら。あの母親だ、もちろん逃げることはできなかったかもしれない。いや、仕事を理由にすればなんとか。とかいろんなことをぐるぐると頭の中で考えながらも、あきらめるしかない、と腹を括り、ふと立ち上がった。
 まずはダニエルに相談しよう。

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