堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
 そして彼の仕事は本当に早かった。結局、昼食の時間にダニエルと会うことができた。

「また、お呼び出ししてしまって申し訳ない」
 ジルベルトは軽く頭を下げる。

「いえ」

「今日は、一緒ではないのだな」
 どこか彼女に会うことができるかもしれない、と期待していた自分がいた。

「ええ、妹は最近、こちらに来ていないのですよ。何やら翻訳の仕事が入ったとかで」
 それはジルベルトにも大いに心当たりがある案件。

「それも重ね重ね申し訳ない」

「いえ、リガウン団長がなんとか交渉してくださったおかげで、翻訳だけですんでいると本人は言っておりましたので、団長には感謝しかありません。ただ、陛下と友人だったというのが意外でした。まあ、家柄的に、何かしらつながりがあってもおかしくはないのですが」
 というドミニクの言葉はなぜかジルベルトの心に突き刺さる。もう、ごめんなさいごめんなさいという謝罪の言葉しか頭に浮かんでこない。次、彼女に会うときにはその気持ちを伝えなければ、とも思う。

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