堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
「いや、これは、なんとも」
 ダニエルも唸った。
「公私混同と言われないような絶妙なラインを攻めてきていますね」
 内容が上手い。このような内容であれば、ジルベルトは婚約者であるエレオノーラを連れて参加しなければならない、ということがよくわかる内容。

「だが、そこまで書かれてしまったら、私はエレオノーラ嬢を連れて参加せねばならない」
 やはり、ジルベルト自身もそう思っていたようだ。

「そうですね。まさか、エレオノーラ・フランシアの噂が陛下たちの耳にまで届いていたとは。もう少し、情報統制をすべきでした」

「ただ、レオンの件は漏れていない」

「それは、第零騎士団の中でも重要機密事項ですからね。陛下にも伝えておりません。ですから、そちらの副団長の耳に入ったことがどうしても解せないのです。どうやら、第零騎士団に口の軽い者がいるようですね」

「まあ、それは。その件に関しては私にも非がある」

「冗談です」

 ダニエルは真顔で答えた。
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