堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
「何か、潜入捜査ですか?」
 不思議に思い、エレオノーラは立ち上がった。これだけ兄が動揺しているのだ。急な仕事の依頼かもしれない。

「いや、そうではない」

「いつものダン兄さまらしくないですね」
 そして、妹はゆっくりと兄に近づく。

「あ、ああ。とにかく、落ち着いて聞け」

「私は落ち着いておりますよ。むしろ、落ち着いていないのはダン兄さまのほうではありませんか。何か、任務のほうで問題でも?」
 エレオノーラはゆっくりと腕を組む。ちょっとだけ兄を威圧するかのように。

「リガウン卿がいらっしゃった」

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