堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
 ジルベルトからのその一言で、エレオノーラの顔は火を吹いた。恐らくその火によって顔はみるみるうちに赤に染められているはず。
 彼女は両手で顔を覆ってしまう。こんな赤い顔を見られたくはない。恥ずかしい。

「エレン、顔を見せて」

「無理です。恥ずかしすぎて。それに、今日は、急に来られたので顔も間に合ってません」

 顔を伏せたまま答えるエレオノーラ。
 その表現に、ジルベルトはふっと息を吐いた。

「その、いつも言っていることだが。エレンはエレンのままでいい。無理して婚約者を演じる必要は無い」

「ですが、本当にこの姿のままでは。ジル様の隣に立つ資格はありません」

 エレオノーラの顔を隠している手の手首を、ジルベルトは優しく捕らえた。

「久しぶりに会えたのだから、あなたのその顔をよく見せてくれないだろうか」

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