堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます

　ジルベルトの声があまりにも真剣だったため、エレオノーラは恐る恐る顔を覆っている両手を外した。
　すると、目の前には柔らかい表情を浮かべたジルベルトの顔がある。

「あの、私。本当に顔が幼いと言いますか。そんなに年相応に見られないといいますか。それで、あの。ジル様の隣には不釣り合いといいますか」
　だから顔を見せたくない。だから変装をする。だから他の人物になりきる。

「少し黙ってもらえるか？　黙らないならその口を塞ぐぞ」

「ひぇっ」

　さすが第一騎士団団長。凄みをきかせられると、黙るしかない。

　ジルベルトの両手は優しくエレオノーラの両頬を包んだ。これでは逃げられない。ジルベルトの顔が近づいてきて、ぶつかると思い、エレオノーラはぎゅっと力強く目を閉じた。恐らく眉間には皺が寄っただろう。