堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
 そんなことを言ってくれるのは、ジルベルトが初めてだった。
 だから、自分のままというのがよくわからない。だけど、そう言ってもらえることは嬉しい。
 エレオノーラは、頬を膨らませた。ここまで言われたのであれば、ジルベルトと二人きりの時は何も演じないようにしよう。子供っぽくても、年相応に見えなくても。

「それで、今日はどのようなご用件ですか?」
 ふっきれたからか、そう、ジルベルトに尋ねることができた。

「あなたに会いたいと思ったから来た。それは用件にはならないか?」

「会いたいと思ったからには、何かしら理由があるのではないのですか?」
 エレオノーラも負けてはいられない。

「ああ、そうだった。あまりにもあなたが可愛らしくて、肝心なことを忘れるところだった」

 ジルベルトの言葉で、エレオノーラはまた精神的なダメージを受けた。彼には敵わないらしい。
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