堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
 それからさくっと時は過ぎ。建国記念パーティ当日。

「エレン。くれぐれも、リガウン卿に失礼なことが無いように」

 一番上のダニエルが言う。だが、この兄もフランシア家の代表としてパーティに参加する者だ。騎士としての参加ではなく、フランシア家の代表として。こんなしがない子爵家であっても参加しなければならないパーティというその規模の大きさ。

「エレンの社交界か。僕も見たかったな」
 二番目のドミニク。

「ドム兄さん、その場にいたらきっと、心臓が持ちませんよ」
 三番目のフレディ。どういう意味の心臓が持たないのか、ちょっと問い質したいところ。

「潜入ではなく、こうやって普通にパーティに参加するっていうのが、不思議な感じです」
 エレオノーラは不安気に言う。

「それは、オレも思っている。とにかく、お前は病弱なご令嬢という設定になっているんだ。何かボロが出そうになったら、気絶したフリでもしておけ」

「なるほど、さすがダン兄さまです」
 ダニエルの言葉に深く頷き、納得するエレオノーラ。

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