堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
 ジルベルトと離れて、婚約者としてのボロが出てもまずい。いや、仮面をつければそんなことも無いのだが、たまに強引な男もいるから、ジルベルトから離れないということは賢明な判断だろう。以前のように仮面を落としそうになるかもしれないし。

「それに、ジル様以外の方とも踊りません」
 エレオノーラのその言葉でジルベルトは顔を上げた。
 堅物騎士団長と言われているジルベルトが、エレオノーラには少し可愛らしく見える。

「私。病弱なご令嬢なんです。だから、何かあったら、倒れますから。倒れる演技も得意です」
 エレオノーラの病弱な設定がこんなところで役に立つとは思ってもいなかったが。

「わかった。そのときは私があなたを抱いて逃げよう」
 というジルベルトの言葉に、逃げるのか、とエレオノーラは思った。
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