堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
 何をしても注目を浴びるらしい。困ったものだ。
 ジルベルトは飲み物を受け取ると、一つをエレオノーラに手渡した。エレオノーラはそれを受け取る。その手が少し震えていた。

「ジルベルト」
 声をかけてきた男がいた。

「伯父のエガートン侯爵だ」
 ジルベルトはエレオノーラの耳元で囁く。ジルベルトの母親の兄にあたるらしい。エレオノーラもエガートン侯爵の名前は何度か耳にしたことはある。潜入調査で見かけたことはあるが、このようなこっちの公の場で目にするのは初めてだ。

「婚約したと聞いてだな。今日は会えるのを楽しみにしていたぞ」

「ご報告が遅くなりまして、申し訳ございません」

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