堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
「そういう、面白い発想に持っていくのはやめろ。父上にも報告できるようなネタを考えろ」
 ダニエルもお茶を手にした。なんとか落ち着こうとしているのかもしれない。

「ネタも何も。リガウン団長とは先ほど任務でお会いしたので初対面です。何の責任を取ろうとしているのかが私にはまったくもって心当たりがございません」
 エレオノーラの言うことはもっともである。なぜならぶつかった瞬間、彼が第一騎士団の団長であるということを認識していなかったのだから。

「実は、一線を越えてしまった、とかはないだろうな?」

「お兄さま。あの状況で超えられる一線があるのであれば、どのようなものであるかの教えを乞いたいのですが?」
 エレオノーラの目が怖かったので、「冗談だ」とダニエルは呟いた。
 だが、超えてしまった何かはある。それが一線と表現していいのかどうかは微妙なところ。

「あの任務時に、リガウン団長と何があったのか。秒単位で話せ」
 と言われてしまったため、エレオノーラは記憶を掘り起こすことにしてみた。
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