堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
「ジルベルト殿」
 と名を呼ばれた。こんな場所で親し気に彼の名を呼んでくる者は限られている。

「これは、グリフィン公爵。ご無沙汰しております」
 ジルベルトは頭を下げた。

「貴殿が婚約したと聞いて、な。思わず声をかけてしまった」
 金色の髪を撫でつけたグリフィン公爵と呼ばれた男も、嬉しそうに笑っていた。皆、ジルベルトが婚約したという話を聞いた者は、嬉しそうにそれを口にしている。

「そちらの女性が貴殿の婚約者か?」
 グリフィン公爵が尋ねた。

「ええ」
 照れたような笑みをジルベルトは浮かべ、エレオノーラは静かに挨拶をした。
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