堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます

２１．お仕事です

「ジルベルト、悪いがエレオノーラ嬢を貸してほしい」
　恐らく、というか絶対に、ジルベルトが一番会いたくない人物が声をかけてきた。しかもその内容がエレオノーラを貸せ、とは一体全体どういうことか。ジルベルトはエレオノーラを隠すかのように立つ。

「陛下、あちらにいらっしゃらなくてよろしいのですか？」
　エレオノーラの仮面のように、無表情という仮面をつけてジルベルトが事務的に答える。

「だから、エレオノーラ嬢を貸してくれ。今日は、近隣諸国からも人が集まっているからな」

「陛下、ですからなおさら。あちらにいらっしゃったほうがよろしいのではないですか？」
　近隣諸国とエレオノーラの繋がりがわからない。いや、予想はつく。だけど、知らない振りをしようと思っているジルベルト。

「ジルベルト。すまんが、エレオノーラ嬢に通訳を頼みたいのだ。こちらで準備した通訳では、力不足なところがあってだな」
　やはり、ジルベルトが思っていた通り。