堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
「あなたが書いたという招待状を手にして、今日という日がとても楽しみになりました。そしてそれを書いたあなたにもお会いしたいと思っていました」

「とても光栄です」

「アークエットの言葉もとてもよく勉強してくださっているのね」
 王妃の顔には柔らかい笑みが浮かんでいる。

 もちろん、潜入調査のため、とはエレオノーラも言えない。何かしら言い訳を考えなければ、と脳内フル回転。

「異文化は自分の世界を広げてくれます。異文化を学ぶことは、自分の成長にも繋がりますから」

「そうですね。勉学は何事も成長に通ずる道ですね」

 エレオノーラはアークエットの潜入調査員になった気分だ。
 だが、心の準備とか下調べとか、そういうのを全部省いているため、いつボロが出るかわからない。ジルベルトの婚約者の仮面の上に、アークエット潜入調査員(実際は、どこからも依頼はきていない)という仮面をつけなければならないのだろうか、ということまで考え始めた。
 その偽の仮面をつけたまま、適当に会話を弾ませるがそれもファニタ王妃は喜んでくれたらしい。とにかくアークエットの言葉を不自由なく使いこなしている、というところが高評価だったようだ。

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