堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
「エレオノーラ。私には息子が二人いるの。紹介してもいいかしら」

 突然、話は変な方向に転がっていく。近くにいる例の国王はニヤニヤと笑っているし、むしろ背後からの視線が痛い。その視線の主はジルベルトに違いないだろう。ジルベルトはこちらの様子を伺っているだけで、何を話しているのかなんてわかりもしないはずなのに、とにかく刺さってくる視線が痛いのはなぜだろう。

 ファニタ王妃から二人の王子を紹介された。年齢はエレオノーラより少し上くらい。
 そして嫌な予感しかない。国王のニヤニヤも止まらない。絶賛、継続中だ。
 あの国王はこうなることをわかっていて、エレオノーラをこの場に呼んだに違いない。婚約者がいることを伝えていないのか? むしろ、婚約者がジルベルトだから、この状況を楽しんでいるのか?

 案の定、その一人の王子から、すっと手を差し出された。
 少し離れたところにいるジルベルトが動く気配がした。つまり、と察する。
 その王子が口を開く前に、気絶しよう。そうしよう。と考えるエレオノーラ。
 後ろには絶対ジルベルトが控えているはず。彼を信じる。

 
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