堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
「ひゃ、何をなさるんですか?」

 エレオノーラは触れられた首元を押さえる。

「すまん、あまりにも可愛いからつい」

「ついって、なんですか? ついって」
 そこでエレオノーラは頬を膨らませる。
 こういった姿が彼女の本当の姿なのだろう。こんな可愛らしい本当の姿を見せられたら、ついしたくなる気持ちも膨らんでしまう。

 それを誤魔化すかのように。
「そうだ。先ほどから一つ気になっているのだが、それはなんだ?」
 ジルベルトの言う「それ」とは、エレオノーラが手にしているバスケットのこと。

「バスケット、つまり籠ですね」
 どこか冷たく答えるエレオノーラ。

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