堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
「ひゃ」
 とエレオノーラからは変な声が漏れてしまった。ジルベルトが彼女の指ごと食べてしまったからだ。

「あ、すまん。つい」
 とジルベルトは言っているが、確信犯である。

「ジル様。ご自分で食べてください」
 頬を膨らませながらも、エレオノーラはバスケットを両手で持ち、ジルベルトの前に差し出した。

「では、次はこれをいただこう」
 やっとジルベルトが自分で食べる気になったようだ。エレオノーラは安心して、目尻を下げた。お茶を一口飲む。

 昼食を終えると、ジルベルトは愛馬のマックスに水を与えた。マックスは足元にある草を適当に食べていたようだ。
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