堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
「私もです。次の任務の前に、このような時間を持てたこと、とても励みになります」
 次の任務。そう、彼女にはそれがすぐに控えている。いつも任務の前になると不安になる。それが、このような穏やかな時間を持てたことで、自信にもつながっていくと同時に、ジルベルトのために絶対に失敗できない、という気持ちにもなる。

「任務……。エレンは今までどのような変装しているのだ?」
 ふと、ジルベルトが尋ねた。

「えっと、いろいろですね。ジル様と初めてお会いしたときは、酒場の男性店員でしたし。他はレストランの料理人や娼館の娼婦。逆に酒場の常連客とか、パーティに参加するご令嬢とか」

「娼館……」
 ジルベルトが額を撫でていたエレオノーラの手首を掴んだ。
「娼館ということは、やはりそういうことを」
 いくら潜入調査といえども、そういうことがあるということが、ジルベルトの心に嫉妬の炎を燃え上がらせたらしい。

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