堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
「とっておきの情報、だと?」

「ええ」
 そこでマリーはオレンジ色の液体に口をつけた。血を飲んでいるかのように見えなくもない。
「どうする?」

 そのマリーからの問いに、グラスに浮いている氷を指でチョンチョンと押し付けながら、アンディは考えた。
 あの第一騎士団の団長、ジルベルト・リガウン。自分が仕事をこなすためには邪魔な存在ではある。あいつが団長になってからのこの王都内の警備体制はより強化され、自分の仲間たちも捕まったり、仕事が失敗したりしているのも事実。
 だが、それが程よいスパイスになっていて、仕事にやりがいを与えているのも事実。程よい刺激を与えてくれているのが彼なのだ。
 ふと考える。このままあのジルベルトを野放しにしておけば、これからのでかい仕事は間違いなく失敗するだろう、と。

「やる、か……」
 独り言のように呟いたのに、それはマリーの耳にも届いていたらしい。ふふっと笑んで、さすがね、と言う。

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