堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
 エレオノーラのその問いに、ダニエルはガクッとうな垂れた。
「婚約したのなら、いずれは結婚するのではないか?」
 ダニエルは言いながらも少しむなしくなった。

 第零騎士団の諜報部潜入班としては優秀な部下である。だが、一人の女性として、恋愛方面についてはかなり音痴なのではないだろうか。いまだにジルベルトの婚約者を演じているという表現をしている辺りで嫌な予感はしていたのだが、その嫌な予感は的中した、ということだ。
 兄として、妹の幸せを願っている。その妹を幸せにしてくれそうな男がジルベルトだというのに。
 当の本人はジルベルトの婚約者を演じている、つもり。

「ですが、お兄さまとウェンディも婚約してから長いですよね。いまだに結婚されていないですよね。お兄さまたちが結婚しないと、私たちも結婚できないのではないですか? その、順番的に」
 また答えにくいところで例えてきたな、とダニエルは思った。

「順番的にと言われたらそうかもしれないが。だが、リガウン団長が今すぐにでもお前と結婚したいと言ったら、その順番に縛られる必要は無い」

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