堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
 この押し倒されているという過程において、その騎士様と自分の唇があたってしまったという事故もあったのだが、それは事故であるため気にしてはいけない。
 だがその事故を気にしている人がいるらしい。それが目の前の騎士様。彼の顔は、さてどうしたものかという困惑に溢れている。むしろ、そこまで困惑されてしまうと、この冷静さを失ってしまうので、逆に困る。

 そこで、エレオノーラは脳みそをフル回転させた。この騎士様は誰だっけかなぁと。今日のこの任務は第一騎士団との合同と言っていたような気もする。ということは、第一騎士団の人。年は三十前後と見た。自分の兄たちより少し年上くらいに見える。しかも特徴的な髪型であるオールバック。見る人が見たら、めちゃくちゃ怖いと感じる。
 という、エレオノーラの脳内データベースを検索した結果、それに該当する人物は第一騎士団の団長であるジルベルト・リガウンがヒットした。

「おい、レオン。無事か? って何をやってるんだ、お前たちは」

 その声はエレオノーラの上官かつ兄であるダニエル・フランシアのものだ。なかなか姿を現さないエレオノーラを心配したのだろう。もしかしたら任務失敗と思ったのかもしれない。
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