堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
 その芝居鑑賞を終えた後、ジルベルトは馬車でエレオノーラを屋敷まで送る予定だった。だが、途中で馬車を止められた。何事かと思い外に出ると、どうやら御者が騎士服をまとった男と話をしていた。
「私が話そう」とジルベルトが御者と代わって話を聞くと、その騎士たちは第零騎士団を名乗った。ダニエルの命令によって、エレオノーラを迎えに来た、と。
 ダニエルの名が出てきたのでジルベルトも安心してしまったのだろう。だから彼はそちらの馬車にエレオノーラを預けてしまった。

「ありがとうございました、ジル様。今日はとても楽しかったです」
 エレオノーラはそう言って、ダニエルからの迎えの馬車に乗り換えた。

 だが、ジルベルトも一人になると冷静になるものだ。

 はて、第零騎士団が迎えにくるのはおかしくないか?
 そもそも、きちんと彼らの身分を確認したのか?
 あの馬車の家紋はどうだった?

 慌ててジルベルトが馬車の中から飛び降りると、エレオノーラを乗せた馬車は彼女の屋敷とは反対方向に走り去った後だった。

「あれを追ってくれ」

 急いで御者に命じて、エレオノーラを乗せた馬車を追ったのだが、すぐに「見失ってしまいました」という声を聞くこととなった。
 このとき、ジルベルトも自身がやらかしてしまった事の重大さに気付いた。
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