堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
「ああ、仲間をやった。今頃それを見て、事の重大さにでも気づいている頃ではないか?」
 アンディの仲間がフランシア家に脅迫状を置いてくる手筈になっている。これからそれの通りに事が運ぶとしたら、あと二時間後にはジルベルトとの決着がついているだろう。

「とりあえず、打っておくか?」
 アンディが指で何かを打つようなジェスチャーをする。
「誰もいないところでやっても面白くないでしょう? あの団長が来てから、彼の目の前で打ちなさいよ。自分の婚約者が堕ちていくところ、見せつけてやるのよ」

 マリーの冷たい視線が、眠っている女性に突き刺さっていた。
 ふっと、アンディは鼻で笑った。あのマリーがここまで落ち着きが無いのも珍しい。それだけこの女性が嫌いなのだろうか。

 馬車が向かった先は、港にある廃倉庫が並ぶ一角。その廃倉庫のうちの一つがアンディたちのアジトだった。
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