堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
 気を失っている彼女をその倉庫に運び入れ、固い床の上に転がした。両手は背中で縛り、両足もしっかりと縛り上げている。倉庫の床は冷たいコンクリートが敷き詰められたもの。そこに縛られたエレオノーラと思われる女性が横たわっている。
 マリーは彼女の顎に手を当て、その顔を覗き込んだ。まだ気を失っているからか、その目を開けることは無い。お腹に一発、蹴りを入れたい気分だったが、目を覚まされては困る。

「ふん、つまらないわね」
 憎々しげにその女性を見下ろすマリー。

「マリー。私は少し仲間たちと周辺を見回ってくるが、この女の見張りを頼んでもいいか?」

「ええ」
 マリーは頷くと、どこからか椅子を引っ張り出してきてエレオノーラと思われる女性の頭の脇にそれを置いた。彼女を見下ろす形でそこに座る。アンディは楽しそうに、外へと出ていく。

 アンディの仲間は、彼をいれて五人。少数精鋭とは言ったものだ。そこから、根を張らせて他の者へのルートを築き上げているようだが、他の者からこの五人と結びつくような痕跡は一切残していない。それがアンディの賢いところといったら賢いところだし、他人を信用しないところといったら、そうでもある。
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