堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
 恐らく、この彼女を助けに来るのは、ジルベルトとダニエルの二人になるだろう。他の二人の兄は、戦闘向きではないはず。たったの二人。そうなると、人数的な割合からいってもアンディたちのほうが有利になるはずなのだが。

「う、ん……」

 足元で転がっている彼女が気づいたようだ。もぞもぞと動き出す。

「あら、やっと気が付いたようね」
 鋭く光らせる眼光。真っ赤にひかれたルージュ。今日のマリーも美しい。

「あなたが?」
 彼女は驚いたようにマリーを見上げた。後ろで縛られている手をなんとかしようと、少し体を動かしている。

「解いてあげたいのはやまやまだけど、あなたの婚約者が来るまで待っていてね」
 足を組み、その長くて細い足を見せつけて、マリーは妖艶に笑んだ。

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