堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
「えっと。それは、変装に支障が出るからという理由で、超病弱な設定にされて、社交界とかそういったものから遠ざけられているせいですよね」

「そして相手は侯爵家だ。さらに同じ騎士団の人間。さらに第一騎士団の団長という立場にある。むしろ騎士団の幹部だ。今後の任務に支障が出るとも思えない。つまり、断る理由が一つも見つからない」
 なぜかダニエルがジルベルトを推し始めた。

「いやいや、そこは理由を考えてくださいよ。むしろ、リガウン団長とお会いするときに、団長の好みでないようなとっても不細工変装をしてがっかりさせた方がよろしいでしょうか」

「あのタイプは、見た目では判断しない。むしろ、より一層責任を取ろうとするだろう。どうあがいても無駄だ。むしろ、リガウン団長に好かれるように努力しろ」
 好かれるような努力ですと?

「えっと、それは求婚を受け入れる大前提ってことですか?」

「そうだ。あのリガウン侯爵家と繋がりが持てるという機会を逃すわけにはいかないだろう」
 ダニエルはいたって真面目だ。真面目な顔をしてそんなことを言っている。

「可愛い妹を犠牲にしてでも?」

「可愛い妹だからこそ、だ。可愛い妹の嫁ぎ先がリガウン侯爵家となると、オレ達が反対する理由は無い」

 もう、この兄に期待はできない。むしろ今、オレ達と言ったことに気付く。何故に複数形なのだろう。
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