堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
「き、貴様」
 男二人がかりで押さえているというのに、それを突き放すだけの力が彼のどこにあるのだろう。
 ジルベルトは一人に向かって右肘を振り上げた。それは見事、一人の顔面に当たった。痛みに耐えきれず顔を押さえる男は、ジルベルトを押さえる手を離してしまった。
 一対一であれば、ジルベルトの方が有利だ。押さえつけている男は慌てて両肩に手を置こうとしたが、ジルベルトの方が動きは速かった。押さえられていた左肩を軸にして、身体を回転させ、その男に膝蹴りを与える。それは男のこめかみに命中し、そして吹っ飛んだ。
 ジルベルトを縛り付ける者はいない。

「ダニエル殿」
 ダニエルに覆いかぶさっている男の背中を引っ張りあげ、無理やりこちらを向かせると、ジルベルトはその顔面に頭突きを食らわせる。顔面に頭突きを喰らった男は、鼻が痛かったのか両手でその鼻付近を抑え込む。
 残った一人は、身体を起こしたダニエルが蹴り上げてふらついたところを、さらに回し蹴りでその頭を狙った。
 ジルベルトとダニエルを押さえつけていた男たちは見事その二人によって、気絶させられてしまった。

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