堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
そこでマリーがむくりと起き上がる。上半身だけ起こした格好で、言葉を続ける。
「はい、ダニエル部長。そこで、彼女の本当の名前を呼んでしまうのは、諜報部としていかがなものでしょう?」
起き上がったマリーが言った言葉はそれ。口調もそれ。
何かが違う。いつものマリーではない。とグリフィン公爵は思う。
そう、つまり彼女はもうマリーという名の仮面をつけていないのだ。そのことにもちろん、グリフィン公爵は気付かない。そもそも、最初からマリーという人物が存在していなかった、ということに。
「あ、あ。マリー?」
グリフィン公爵は、マリーを見つめる。だが、驚きのあまり後ろに腰をついてしまった。両足は放り投げ、手は床につき。
「残念ながら、マリーは死にました。あなたも確認したのでしょう? アンディ?」
その艶やかな微笑み方はまさしくマリー。だけど、話し方と仕草が何か、こう、違う。
「はい、ダニエル部長。そこで、彼女の本当の名前を呼んでしまうのは、諜報部としていかがなものでしょう?」
起き上がったマリーが言った言葉はそれ。口調もそれ。
何かが違う。いつものマリーではない。とグリフィン公爵は思う。
そう、つまり彼女はもうマリーという名の仮面をつけていないのだ。そのことにもちろん、グリフィン公爵は気付かない。そもそも、最初からマリーという人物が存在していなかった、ということに。
「あ、あ。マリー?」
グリフィン公爵は、マリーを見つめる。だが、驚きのあまり後ろに腰をついてしまった。両足は放り投げ、手は床につき。
「残念ながら、マリーは死にました。あなたも確認したのでしょう? アンディ?」
その艶やかな微笑み方はまさしくマリー。だけど、話し方と仕草が何か、こう、違う。