堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
「あの、リガウン団長」
 不安気に揺れる瞳で、ジルベルトを見上げる。

「ジル、だ。エレン。もう任務は終わった」
 そこでジルベルトは優しく微笑んだ。任務中のあの怖い顔はどこにも無い。

「あの、ジル様。立てません」

 ふっと、ジルベルトは笑った。
「わかった。だったら、前か後ろか、どちらがいい?」

「前か後ろ?」

「抱っこかおんぶだな。立てないのだろう?」

「でしたら、おんぶでお願いします」

 するとエレオノーラの目の前に広い背中が現れた。
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