堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
 それから数日後。本当に数日後。むしろ三日後。
「団長。先日頼まれていた調査の結果を報告いたします」

 数枚の用紙を手にしたサニエラが団長室へとやって来た。
 ジルベルトは二度見した。用紙が数枚。数十枚ではなく。だいたいこの辺の身上調査書というのは一年につき一枚が平均的である。だが、数枚。ということは、実は彼女は十にも満たない少女ということか。いやいや、そんなことは無い。触った時にはそれなりに成熟した、というところまで思い出し、サニエラに動揺がばれないように咳払いをしてみた。

 そんなジルベルトに冷たい視線を向けたサニエラは、淡々と報告を始める。

「エレオノ―ラ・フランシア嬢ですが。年は今年十八になったところ。むしろ、なったばかりです。昨年、学院を卒業されているようですが、どうやら学院に通っていたわけではなく、自宅で勉強を続け、試験も自宅で受け続け、それで卒業されたようです。つまり、学院に通わず学院を卒業したという、非常にかわった生徒で、かつ非常に優秀な生徒でもあります。特に外国語については、他の生徒よりも高い成績を残しておりました。また社交界についてはデビューしたものの、身体が弱いという理由から一切参加しておりません。従いまして、エレオノ―ラ嬢の素顔は誰も覚えていない、もしくは知らない、ということになります」

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