堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
「ジル様?」
 ジルベルトに包まれたエレオノーラはくぐもった声をあげた。

「私の妻は嫌か?」

 ジルベルトの腕の中でフルフルと首を横に振る。

「エレン、私はあなたを愛している」

「はい」

「だから、いつまでも私の隣で笑っていて欲しい」

「はい」
 彼の腕の中で、もう一筋の涙を流した。

「できれば、あなたの気持ちも聞かせて欲しい。あなたには、他にふさわしい人がいるのではないかと、いつも不安になる」

「私も、ジル様のことが好きです。これからもずっと、お側にいても良いですか?」
 そっとエレオノーラは顔をあげた。

「ああ、もちろんだ」

 ジルベルトはエレオノーラの顔を覗き込むと、彼女の唇に自分のそれをそっと重ねた。
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