堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
「いや。彼女は第零騎士団の所属のはずだが」
 ふとジルベルトはそれを口にした。サニエラの報告が、ジルベルトの知っているそれとは異なっているからだ。どう見てもあれは病弱には思えなかった。

「ああ、団長が知りたいのはやはりそちらの方でしたか。以上が、彼女の表向きの調査結果です。第零騎士団の方は裏向きの調査結果になります」

 この裏向きの調査って、けっこう大変なんですよ、とサニエラは呟く。
 ジルベルトは執務席の机の上に右肘をつき、その手の甲の上に顎を乗せた。裏向きの調査ってなんなんだ、と心の中でつっこみながら。

「エレオノ―ラ・フランシア、第零騎士団諜報部潜入班所属。騎士団ではレオンと名乗っているようです。全ての書類がエレオノーラではなくレオンで存在しています。諜報部門としての情報収集能力は非常に優れている、という評価を得ているようです。しかし、その任務が特殊である故、常にあちらの騎士団の建物の方に常駐しているわけではないようです。また、入団試験にも男装して現れ、誰もそれがエレオノ―ラ嬢であったことを見破ることができなかった、というのは第零騎士団だけではなく、騎士団の上層部の間でも伝説となっています。従いまして、第零騎士団の中でも彼女の素顔を知っている者はほとんどいない、という結論に至りました」
 とそこまでサニエラが報告した時、ジルベルトも彼女の素顔を見ただろうか、という疑問が心の底で沸き起こった。
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