堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
 それはもう、不躾に、本当に不躾に扉が開かれた。こんな不躾な開け方をしてくる人物を、義母は二人しか知らない。
 一人は自分の夫。だが、今日は例のグリフィン公爵の件で王宮に呼び出されてしまった。年の功というやつで、騎士団を引退しているにも関わらず呼び出されてしまった。夫が呼び出された、ということはやはり王宮が混乱しているということ。だから、第一騎士団の団長を務めている息子がなかなかこの屋敷に帰ってくることができない、というのは非常にわかる。
 仮に夫が帰ってきたとしても、今日の今日でこのような開け方はしない。

 ということは、もう一人の心当たり。

 もちろん、息子のジルベルトしかいない。
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