堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます

2.久しぶりです

「エレン。元気だったか」
 やはりその扉を不躾に開けたのは騎士服姿のジルベルトであった。
 後ろに執事のトムが「坊ちゃん、困ります」とか言って、慌てている。やはり執事から言わせたらあのジルベルトでさえも「坊ちゃん」らしい。

「お帰りなさい、ジル様。お出迎えせずに申し訳ありません」
 エレオノーラがすっと立ち上がると、ジルベルトはずかずかと近づいてきて、彼女を両手で抱きしめた。抱きしめた途端。

「会いたかった」

 首元に顔を埋められ、さらに耳元でそんなことを囁かれたのであれば、エレオノーラの顔もみるみるうちに茹で上がる。

「私も、ジル様にお会いしたかったです」
 とエレオノーラが言ったら、さらに彼女を抱きしめる腕に力が入った。

< 255 / 528 >

この作品をシェア

pagetop