堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
 ドレスと言う言葉が出た時に、口にカップをつけていたジルベルトの右眉がピクリと反応した。
 それを見た母親は、この息子が考えていることが手に取るようにわかった。

「そうね。せっかくあなたもお休みが取れるというのであれば、早い方がいいですね。では、半月後にいたしましょう。半月あれば準備は間に合います。式は教会で。その後、お披露目のパーティですね。半月しかありませんから、招待客は身内で良いですね」
 腕が鳴るわ、と母親は喜んでいる。まあ、いつでもできるようにと、裏でこっそりと根回しもしていたから半月で間に合うのだ。

「では、母上。お茶もいただいたことですし、必要な話も終わりました。エレンをお借りしても?」
 必要な話とは結婚式の話。この会話にエレオノーラの出る幕は無かった。親子で話をすすめ、双方納得したうえでの結論。

「仕方ないわね。今は譲りましょう」

 母親は妖艶な笑みを浮かべた。熟女の笑みというのも色っぽいもの。ここにジルベルトの父親がいたら、非常に喜んだことだろう。

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