堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
「エレン」
 ジルベルトがさっと手を差し出した。エレオノーラはそれに自分の手を重ね立ち上がると、いきなりジルベルトに横抱きにされてしまった。

「あの、ジル様。私、自分で歩くことができますが?」
 そう、エレオノーラには立派な足がある。今日は腰も抜けていないし、その足で歩くことだってできるのだが。

「私がこうしたいと思ったのだ」
 こうしたいと思われても、こんな義理の母親の目の前でこうされても、エレオノーラに襲いかかるのは恥ずかしいという感情しかない。

「ええと、お義母さま?」
 視線で助けを求めてみたが、義母の目はあきらめなさい、と言っていた。
 義母にあきらめなさいと言われたらあきらめるしかない。エレオノーラは素直に両手をジルベルトの首元に回した。
 それに満足したジルベルト。

「では、夕食までエレンを借ります」

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