堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます

3.結婚式です

 再びジルベルトが戻ってきたのは、それから十分後のことだった。
 その間、エレオノーラは行儀よくソファに座って待っていたのだが、彼が戻ってこなかったらどうしよう、という不安もあった。
「ジル様、どうかなされたのですか?」

 やっと戻ってきて、目の前に立つジルベルトを、エレオノーラは見上げた。

「いや、まあ。どうもしていない。隣に座ってもいいか?」
 謎の十分間の行動、どうもしていないわけはないと思うのだが、エレオノーラは彼にそれ以上問い質すのをやめた。

「はい」
 嬉しそうな声色で返事をし、微笑む。
 ジルベルトが隣に座ると、そのソファはゆっくりと沈んだ。

「ジル様とこうやって二人きりでお話をするのは、あの十回目にお会いして以来ですね」
 彼の方に顔を向けて、エレオノーラは声をかける。

「そうだな」

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