堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
「よっぽどお前に会いたかったんだな。サニエラ副団長が言うには、新妻に一月以上も会えていないようだから、今日は見逃してあげてください、だそうだ。辞められるよりはマシです、と」
 ダニエルは笑いすぎて、目尻に涙を浮かべていた。あの兄がこれだけ笑うということは、よっぽどのことだったのだろう。

 だがエレオノーラにとっては笑えない話だった。笑えない話というよりはむしろ恥ずかしい。その場にいなくてよかった、という気持ちが込み上げてくる。

「あのときは、ショーン団長がお前を自宅待機にさせていたことを後悔していたな」

「むしろ、私がその場にいた方が、私が私であるとばれてしまうのでまずかったのではないですか?」
 とりあえず真面目に返事をした。

「まぁ、そうかもしれないな」
 ひとしきり大笑いして満足したのか、ダニエルはカップを手にする。

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